「AKILY」

(アキリ)

AKILIMALI ISSA ABDALAH(AKILY)
アキリマリ・イッサ・アブダラ(アーティスト名:AKILY)

AKILIMALI ISSA ABDALAH(アキリマリ・イッサ・アブダラ) は、現代ティンガティンガ・アートを代表するアーティストの一人であり、鮮やかな多色表現と独創的な構図によって独自の芸術世界を築いている作家です。

1977年7月7日、タンザニア南部ルヴマ州トゥンドゥル県ナカパンヤ村に生まれる。

彼はティンガティンガ・アート創始者 EDWARD SAIDI TINGATINGA(エドワード・サイディ・ティンガティンガ) の一族に連なる家系に生まれ育ちました。

幼少期から創始者の作品やその精神に触れながら成長し、ティンガティンガ文化を最も身近に受け継いだ世代の一人として知られています。

創始者の血を受け継ぐ作家

アキリ自身によれば、祖父である Salum Lumumba(サルム・ルムンバ) はエドワード・サイディ・ティンガティンガの兄弟であり、幼い頃から家族を通じてティンガティンガ芸術に囲まれた環境で育ちました。

そのため彼にとってティンガティンガは単なる絵画技法ではありません。

生活の一部であり、家族の歴史そのものでもあります。

1996年6月26日、本格的に絵画制作を開始。

その後、ティンガティンガ作家 Abasi Mbuka(アバシ・ムブカ) のもとで技術を学びます。

しかし学ぶ過程で、既存のティンガティンガ作品の多くが似通っていることに気づきました。

そこで彼は模倣から離れ、自らのスタイルを模索し始めます。

この探究心こそが、後のAKILY作品を特徴づける最大の要素となりました。

「七色の画家」

AKILYを語る上で欠かせないのが色彩です。

彼は自身について、

「私は7つの色を使って作品を描く」

と語っています。

伝統的なティンガティンガでは単色背景や限定的な配色が多く見られますが、AKILYは複数の色彩を大胆に組み合わせることで、より豊かで現代的な画面を生み出しています。

赤。

黄。

青。

緑。

黒。

白。

そしてそれらの中間色。

彼の作品では色彩そのものが生命を持ち、画面全体に躍動感を与えています。

サバンナの生命を描く

AKILY作品の中心にあるのは、タンザニアの自然です。

キリン。

ゾウ。

サル。

鳥。

アンテロープ。

ライオン。

彼は単独の動物だけでなく、多種多様な生き物が共存するサバンナ全体を描くことを好みます。

特に特徴的なのは、

「共生」

というテーマです。

彼の作品には争いよりも調和が多く描かれます。

異なる動物たちが同じ空間に存在し、一つの世界を形成しているのです。

そこにはアフリカの自然観や生命観が色濃く反映されています。

重なり合うキリン

AKILYの代表的なモチーフの一つが「重なり合うキリン」です。

複数のキリンを画面いっぱいに配置し、首や身体が複雑に交差する構図は、現代ティンガティンガの中でも非常に人気があります。

これらの作品では、キリンは単なる動物ではありません。

画面を構成するリズムそのものとして機能しています。

首の曲線。

斑点模様。

色彩の反復。

それらが装飾的なパターンとなり、一種の抽象絵画にも似た美しさを生み出しています。

キリマンジャロへの憧憬

AKILY作品にはしばしばキリマンジャロ山が登場します。

アフリカ最高峰であるキリマンジャロは、タンザニア人にとって国家の象徴でもあります。

彼はその雄大な姿を背景に、動物たちが自由に生きる楽園のような世界を描き出します。

自然と生命の豊かさを象徴する存在として、キリマンジャロはAKILY芸術における重要なモチーフとなっています。

創作哲学

AKILYは制作において、技術以上に心の状態を重視しています。

彼は、

「落ち着いた気持ちで描くことが最も大切」

と語ります。

また、

手を清潔に保つ
筆を整える
布を清潔に保つ

など、制作環境にも強いこだわりを持っています。

これは単なる習慣ではなく、良い作品は良い環境から生まれるという信念によるものです。

観る人との対話

AKILYは常に観る人を意識して制作しています。

彼にとって絵画は一方的な表現ではありません。

作品を見る人の感情と、自分の思いが重なったとき、初めて作品は完成すると考えています。

そのため彼は、

「驚き」

「楽しさ」

「喜び」

を非常に重視します。

初めて作品を見る人に、

「こんな絵は見たことがない」

と思ってもらうこと。

それが彼の目標です。

ティンガティンガの未来を見据えて

AKILYは、ティンガティンガ・アートを単なる絵画として捉えていません。

彼はその可能性を広く考えています。

Tシャツ。

帽子。

カップ。

傘。

カーペット。

インテリア。

ファッション。

彼はティンガティンガ・アートが様々な形で社会に広がり、人々の日常に溶け込む未来を思い描いています。

この考え方は、現代のアートライセンシングやデザインビジネスとの親和性が非常に高く、伝統芸術を次世代へ発展させる視点として注目されています。

美術史的評価

エドワード・サイディ・ティンガティンガが創造した芸術言語を受け継ぎながらも、AKILYはそれを単なる伝統として保存するのではなく、新たな色彩感覚と構成力によって現代へ更新している。

彼の作品には創始者の精神への敬意と、未来への挑戦が同時に存在する。

マリキータが都市の物語を描き、ルブニが自然の生命力を描くとすれば、AKILYはティンガティンガ・アートそのものの可能性を探求する作家である。

鮮やかな七色の世界の中で、彼は今日も新しいティンガティンガの姿を描き続けている。

AKILYの画風
「描く」より「構成する」画家

エドワードは動物そのものを描きました。

ルブニは自然との共生を描きます。

マリキータは人々の暮らしを描きます。

しかしAKILYは少し違います。

彼はまず画面全体のデザインを考えます。

その上で動物たちを配置します。

つまり彼にとって動物は主役であると同時に、

画面を構成するパーツ

でもあるのです。

《Standing Animals》

(添付1作品目)

これはAKILYを代表する傑作です。

動物が模様になる

キリン

シマウマ

カバ

ライオン

ゾウ

チーター

アンテロープ

が一列に並んでいます。

しかし面白いのは、

動物が立っているのではなく

縦のストライプとして機能している

ことです。

遠くから見ると、

まるでアフリカンテキスタイルのようです。

近づくと動物たちになる。

これは非常にデザイン的な発想です。

色彩の特徴

ピンク

黄色

本人が語る

「7色」

がほぼそのまま使われています。

AKILY独自の色

特に特徴的なのはグラデーションです。

伝統的ティンガティンガではあまり見られない、

柔らかな色の移行が存在します。

これが作品に現代的な印象を与えています。

《Elephant Family》

(添付2作品目)

母子のテーマ

ルブニにも母子のテーマがあります。

しかし描き方が全く違います。

ルブニは物語として描く。

AKILYはデザインとして描く。

青い象

実際には存在しない色です。

しかし美しい。

AKILYは現実ではなく

感情を描いています。

色彩心理

青は

安心
平和
優しさ

を連想させます。

そのためこの作品は、

巨大な象でありながら威圧感がありません。

家族の象徴

4頭の子象。

母象。

柔らかな色彩。

これは家族そのものを描いた作品です。

《Tree of Life》

(添付3作品目)

これはAKILY芸術の集大成といえる作品です。

生命の樹

中央に一本の樹。

その周囲に

キリン
シマウマ
ゾウ
カバ
サル
チーター
アンテロープ

が集まっています。

共生の思想

ここには捕食も争いもありません。

本来なら一緒にいない動物たちが

同じ場所に存在しています。

これは現実のサバンナではなく、

AKILYの理想世界です。

キリンの使い方

特に面白いのはキリンです。

キリンは動物であると同時に

建築物のような役割を果たしています。

首が柱になり、

画面全体を支えています。

構成美

この作品を見ると、

AKILYが単なる動物画家ではないことが分かります。

彼は画面全体を設計しています。

AKILY芸術の特徴
① デザイン性

ティンガティンガ作家の中でも特に高い。

② 七色の世界

本人が語る

「7色」

が作品の核になっている。

③ グラデーション表現

現代ティンガティンガでは珍しい特徴。

④ 共生のテーマ

争いではなく調和。

⑤ キリンの名手

現代ティンガティンガにおいて、

AKILYはキリンを描く最も優れた作家の一人といえる。

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AKILY作品一覧

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